top of page
ブログ: Blog2

"変身":カブトムシの収納術

更新日:1月6日

この内容を含む、角原基の話の全体像は、ボスの近藤先生が書かれた以下のブログが非常にわかりやすいです。


分かりやすさの点では敵わないのですが、自分も研究をやった人間として、記事を残しておきます。2021年に自分の筆頭2本目が出たときに書いたものですが、やや読みにくい気がするので加筆修正しました(2025.01加筆修正)。

---------------------------------------------------------------------------------------------


論文が公開されました!



まず2017年の論文の内容を軽く説明しておきます。

カブトムシの角は、幼虫にはなく、蛹には大きな角があります。しかも、この大きな角は、蛹になる際のわずか2時間で出現します。

巨大な構造物が突然出現する、まるで一夜城のようなことを可能にしているのが、カブトムシの角原基です(図1)。

幼虫の頭の中にある角原基が、非常に複雑に折りたたまれており、蛹になる際に大きく膨らむために、巨大な角を突然出現させることができるわけです。

図1: 角原基. 表面にしわがいっぱい. しわにはパターンがある.

この一見すると蛹の角とは似つかないものが、しわが展開されて変形することで、蛹の角と同じ形になる、ということを2017年の論文では示しました(図2)。

図2: コンピュータ上に再現した角原基を膨らませると、蛹の角と同じ形になる.

しかし、2017年の論文では、"どんなしわが角原基の表面に存在しているのか?"や"しわの展開でどういった変形が局所で生じ、それがどう合わさって蛹の角への変形になるのか?"といった疑問には答えれていませんでした。


これは、例えば同心円のしわによって平面が円錐へと変形するように(図3)、角原基表面のしわのパターンと、その変形との関係を知りたいということです。

個人的には、そこを理解しないと、この変形に関して理解したとは言えないなと思っていました。

図3: 同心円のしわは、平面を円錐へと変形させる.

そのために、この論文では、コンピュータ上で折り畳みのパターンを可視化したり機能を解析する手法を開発しました(図4)。

図4: コンピュータ上で折り畳みのパターンと変形を調べる手法.

結果として、角原基から蛹の角への変形でみられる3つの大きな変化(先端部の四分岐構造形成・近遠位軸方向への伸長・背側への立ち上がり)が、角原基の異なる領域によって生じるということが分かりました(図5)。


図5: 角原基表面のしわは場所ごとに異なる特徴で, 異なる変形を達成している.

詳細はここでは割愛しますが、一つ見てほしい図が、Fig.4です。stalkと呼ばれる、角の柄に相当する部位では、波打ったしわや、互い違いになったしわが見られるのですが、これらの特徴が、外から力を加えて布を変形させたときに生じるしわと似ているということを示す図です(図6)。

上の図は、ネックウォーマーを切り開いて、峰を作って曲げることで、波打ったしわが再現できることを、下の図は、互い違いになったしわが、ズボンの裾を上に引っ張ることで再現できることを示しています(後輩のズボンが論文にデビューしました)。

基本的に図4の方法で解析できると思っていたのですが、柄の部分は折り畳みの複雑さに対して生じるのが円筒になるだけ(局所的には平面になるだけ)なので、よく分からない…となっていたのですが、この図の内容が分かったことで、角原基の理解がかなり進んだと思います。

図6: stalk部分にみられるしわは受動的に生じるしわと類似している.

詳しい話は、ぜひ論文の方を読んでいただけたらと思います。何か不明点があればぜひ連絡いただけると嬉しいです。



全体の感想

2017年の論文だけでは、角原基の構造はあまり理解できていない気がするなぁという気持ちでやった研究です。

内容的には、たしか大学6年の頃には出ていたかと思うのですが、国試や臨床研修などがあったために、投稿がずれ込んだんだったかと思います。

実験ではなかなかできない内容なので、"コンピュータ上で角原基を展開できた"という2017年の論文の内容が活きた論文になったと思います。

この前に、後輩が中心になって進めた、角原基の形成に関与する遺伝子の話が出ているのですが(Genetical control of 2D pattern and depth of the primordial furrow that prefigures 3D shape of the rhinoceros beetle horn | Scientific Reports)、実験とシミュレーションの得意をそれぞれ活かしながら、別の角度から角原基の理解を深めることができたなと思っています。

閲覧数:337回0件のコメント

最新記事

すべて表示

論文がプレプリントに出ました

先日、論文がプレプリントに出ました。 Computational analyses decipher the primordial folding coding the 3D structure of the beetle horn 2017年の論文(Complex...

Comments


bottom of page