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肝硬変

12月10日の国試advent calendarのテーマは、肝硬変です。

「肝硬変なんてそんなに難しくないよ!」という人もいると思いますし、もともと自分も肝硬変が面白いとは思っていませんでした。

そんな中で肝硬変も面白そうかも、と思うようになった話を紹介します。


まずは問題から。


問題① (95C39)

50歳の男性.1ヵ月前から特に誘因なく食思不振と腹部膨満感とが出現し,次第に増強するため来院した.20歳のときに交通事故で受傷し輸血を受けた.7年前から慢性肝疾患で不定期に通院していた.意識は清明.腹壁静脈怒張し,腹部に波動を認める.両側下腿に浮腫を認める.血液所見:赤血球380万,Hb 11.5g/dL,Ht 38%,白血球4,200,血小板6万.血清生化学所見:総蛋白5.9g/dL,アルブミン2.3g/dL,総ビリルビン2.0mg/dL,AST 72単位,ALT 48単位,アンモニア40μg/dL(基準18~48).ICG試験(15分値)45%(基準10以下).試験穿刺で得た腹水は淡黄色で,Rivalta反応陰性であった. 適切な処置はどれか.3つ選べ. a低蛋白食摂取 b食塩摂取制限 c利尿薬投与 dアルブミン投与 e濃厚血小板投与


問題② (98F33-34)

次の文を読み,33,34の問いに答えよ. 62歳の女性.意識障害のため家族とともに来院した. 現病歴:このところ忙しく便秘気味であった.昨夕から食事中に箸を落としたり,しばらくボーッとするなど,少し様子がおかしいことに家族が気付いた. 既往歴:30歳時分娩の際に大量出血をきたし輸血を受けた.病院に行くのが嫌いなため,その後血液検査を受けたことがない. 現 症:意識はやや低下している.身長157cm,体重56kg.体温35.8℃.脈拍80/分,整.血圧146/82mmHg.眼球結膜に軽度の黄染を認める.胸部にクモ状血管腫を認める.腹部は平坦,軟で,心窩部に肝を8cm触知する.脾は触知しないが,脾濁音界は拡大している.下肢に浮腫は認めない.

[F034]  摂取を制限するのはどれか. aエネルギー b糖質 c蛋白質 d脂肪 eビタミンD


この2つの問題では、肝硬変の合併症の中でも重要な、腹水と肝性脳症(と静脈瘤)について扱っています。


1つめの腹水を扱っているのが問題①で、この場合は血管外の体液量を減らすために、

  1. 外液に分布するNaを減らす(減塩)

  2. 尿で体液を出す(利尿薬)

  3. 血管に引き戻す(アルブミン)

が治療になります(他に、腹腔穿刺など)。


一方の問題②では、肝性脳症が焦点になっています。

この場合は、窒素負荷になるcのたんぱく質に気を付けることになります。



それぞれ解くのは難しくないのですが、改めて考えると、

  • たんぱく質摂取を減らすとアルブミン産生が落ちて腹水が増悪するのでは?

  • アルブミンの投与は窒素負荷になるのでは?

など、どうなっているのだろう?と疑問がわいてくると思います(他にも、利尿薬の投与はアンモニアの増加を引き起こす)。

自分もこれらの明確な答えを探せなかったのですが、つまりは、「肝性脳症と腹水の治療がトレードオフになっていて、そこの管理をどうするか」というのが肝硬変の管理の面白さなのかな?と、これらの問題で思うようになりました。

(実際に、高蛋白食が栄養療法として使われていたときもあったりしたみたいです)


たぶん肝硬変以外の疾患でも、(特に内科での管理が必要なときは)このような面白いポイントがあると思うので、国試を解きながら少しずつそういうことを見つけていきたいですね。

というわけで、肝硬変について考えるときは、患者さんの状態(特に主訴)に気を付けて、治療を考えないといけない、という話でした。




(補足1)

浮腫と肝性脳症が同時に起きたときの管理についての問題を探してみたところ、1題みつかりました。

97H32

脳症と腹水とを伴う肝硬変患者の治療として適切でないのはどれか. a 低蛋白食 b 生理食塩液輸液 c 利尿薬投与 d ラクツロース投与 e 分枝鎖アミノ酸製剤投与


これは明らかにbが間違いなので簡単に選べてしまいますが、他の選択肢について少し見てみると、

a 低蛋白食   → 体に入ってくる窒素を減らして肝性脳症を改善

c 利尿薬    → 腹水の治療

d ラクツロース → 消化管由来のアンモニアを減らす(アンモニア産生菌の発育抑制など)

e 分枝鎖アミノ酸→ Fischer比を是正して肝性脳症に効く

というように、アミノ酸の代謝として生じるアンモニアだけでなく、消化管で生じるアンモニアを減らしたりしてやりくりするようです。


(補足2)

ガイドラインによると、低蛋白食はサルコペニアなどにより長期的な予後を悪化させる可能性もあるため、肝性脳症急性期などを除いて長期的に行うことは推奨されていないようです。



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